写真展「発光」青森県立美術館

Category : blog, Exhibition, News
Date : December 16, 2022

 

 

会期   2023年1月7日(土)〜29日(日)
休館日  1月 10日(火) 23日(月)
開館時間 9時30分〜17時 (入館は16時30分まで)
会場   青森県立美術館 コミュニティーギャラリー
入場料  入場無料

青南商事50周年記念 菅原一剛写真展「発光」特設サイト

1月7日 15時30分〜 ギャラリートーク 太田菜穂子さん(キューレター)

 

年明けの2023年1月7日より、青森県立美術館において菅原一剛写真展「発光」が開催されます。
この展覧会は、ぼくが20年に渡って撮影を続けてきた津軽において、
中でも、雪の中より立ち現れる太陽の光のあたたかさを追いかけた写真群を中心に展示します。

実はこの展覧会、本来であれば3年前に開催する予定だったのですが、
このコロナ禍の中、この度ようやく開催出来ることになりました。
とはいえ世の中はまだまだ、コロナ禍だけではなく、国内はもちろん、
海の向こうに目を向けてみても、まだまだ落ち着いた日常が迎えられない日々が続いています。
こんな時だからこそ、このかけがえのない日常の大切さを知ると同時に、
自身の大切なものを見つける、大切なものと向き合ういい機会なのかもしれません。

この度ぼくは、そんな気持ちを込めて、今展覧会のタイトルを「発光」としました。
いつの日もぼくにとっての写真行為というのは、
この世界の中の、具体的な「光」そのものを見つける作業でもあり、
またそれは、自身にとっての「光」と同じような輝きそのものを見つけていく行為でもあるのです。

そしてぼくはこの20年の中で、最初は青南商事というリサイクル会社の現場の撮影にはじまって、
やがて今回の舞台でもある「津軽」という土地の中で、
岩木山をはじめとした、様々な光景と人々に出会いました。
いつしかぼくにとって、この「津軽」という場所は、特別な場所ではなく、
まるで故郷のような安心感を持って、時間を重ねている自分がいました。
そのようにして、リサイクルの現場と、そこに存在する日常の光景のどちらにも、
ここには大切なものがあるような気がして、ぼくは津軽の撮影を続けました。
中でも、あのまっ白な雪の中における、あたたかい「光」をひたすらに追い続けました。
その白い雪の中で輝く、眩いばかりの光たちだけではなく、
ふとした日常の中において、あるいは少し特別な時間の中で、
驚くほどいくつもの、眩しいと感じる光景に出会うことが出来ました。

そういった意味では、展示される写真群は、ごく一部ではありますが、
その中には、その雪の中より立ち現れる眩しくあたたかい光たちを
なんとしても表現したくて、今までも様々なプリントの方法を模索してきました。
銀塩写真の世界の中には、白色という色が具体的に存在していません。
通常は、白を表現する場合は、紙地の白を用いることになります。
ところが、雪の場合は光以上に、具体的な白がそこにあります。
日本語では雪景色のことを「白銀の世界」と呼ぶように、輝きを持って表現します。
だとしたらと、今までプリンターの久保元幸さんと一緒に作り続けてきた光る湿板写真。
そして昨今、インクジェットプリントの世界では白インクを使用出来るようになったので、
大洋印刷さんと共に、UV白インクのみを使用して、しかも多重刷りのようなかたちで作られたプリント。
そして今回、新たに高知の浜田兄弟和紙製作所さんの手による、
世界一薄いと言われる典具帖紙によるプリントを、額装を特別な多重構造に構成することによって、
和紙の原料でもある楮が白く光る特長を生かした作品など、そのかたちはさまざまですが、
その一見多様に見えるであろう表現方法は、こうやって一堂に会すると、
むしろ自然界そのもののように感じることも出来るのですから不思議です。
また、それ以外にもリサイクル工場の中における鉄屑たち、
遺跡群の中から発掘された縄文土器のかけらたちも含まれます。
そしてそれらは、どちらもぼくには、とても大きな輝きを持った存在として目に映りました。
ですので、今回はそれらの写真も同じ空間に展示します。

何よりも今回の展示に向けての製作過程において、自身にとって大きな出来事として、
これまで幾度も撮影を繰り返してきた多くの津軽の写真群と向き合っているとき、
ふとしたひとつの大きなきっかけによって、もう一度改めて自身と向き合うことが出来たこと。
そしてぼくは、そんな気持ちをたよりに、撮影時のまっ白な雪の中での気持ちに寄り添いながら、
久しぶりに暗室の中で、他の作品群に比べると、とても小さなプリント作品ではありますが、
ただひたすらに、現在自身が持ちうるすべての想いを込めて、プリントを制作しました。
それはまるで、写真を始めた頃に戻ったかのような写真行為でもあり、
同時にその過程で、かけがえのない大切なものを見つけたような感覚がありました。
そしてそうやって生まれた写真たちは、とてもあたたかい世界そのものでした。
まさに、それはぼくにとって、大切なものが生まれた瞬間でもありました。

そろそろ本格的な冬がやって来ました。
おそらく雪の中における、雪の写真展となると思われますが、
是非とも、そんなあたたかい世界を観に来ていただけましたらうれしいです。

オープニングの7日から15日まで、また20〜22日、27~最終日29日は、基本的に在廊している予定です。

宜しくお願いいたします。

 

 

この度、2冊の写真集が生まれることになりました。
一冊は、今回の写真展「発光」の公式図録としての写真集。
もう一冊は、ぼくが雑誌「ラ・クラ」において、10年に渡って続けてきた連載「津軽」をまとめたフォトエッセイ集。

異なる出版社、異なる印刷所で作られたこれらの本が、中川健一さんの共通デザインと装幀で刊行出来たことは、
その両者たちが、それぞれの想いだけでつなげてくれた写真集です。
この場を借りて、心より御礼を申し上げます。

おかげさまでどちらも、とてもいい本になりました。
こちらも是非手に取って、ご覧下さい。

写真展「発光」公式図録

rakra連載「津軽」フォトエッセイ集

「発光」展レポート

高知新聞2023/01/21


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